JAJA MAGAZINE

ジャマイカの学校、コロナ渦で1年半閉校か?

ジャマイカでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年3月から閉校しています。実に、子どもたちは1年2カ月もの間ほとんど学校に通っていません。

新規感染者数が落ち着いた頃、試験的にいくつかの高校などが再開しましたが、その後新規感染者数が増加して再び閉校となりました。 2021年6月現在は、進学に関わる重要な試験を受ける学年などが限定的に登校し、対面授業を受けています。制服を着た学生を町で見かけるのは嬉しいものです。とは言え、完全開校の時期はいまだ不明です。

進学に関わる重要な試験を受ける学生に対して対面授業を再開すると発表するホルネス首相
出典:The Office of the Prime Minister (Posted on May 5, 2021 by OPM Communications)

普段なら毎年6月に卒業式が行われますが、現在はコロナ対策の観点から一定以上の人数が集まるイベントが禁止されているため、保護者などを招く通常の卒業式は昨年同様開かれません。

写真は2019年に筆者が参列した小学校の卒業式です。卒業生がローブをまとい、大学の卒業式のように華やかです。このローブのレンタル代が数千円するそうで、「卒業式は色々とお金がかかる!」と言いながらも、我が子の思い出のために親たちはお金をなんとか工面します。

普段のジャマイカの卒業式は、さすがお洒落大好きジャマイカ人とあって、参列者がとにかく派手です。子どものローブ代に加えて、自分が着るドレスを新調したりヘアスタイルを変えたりするのにも結構なお金をかけています。

日本人の筆者から見ると「そこまでしなくても」と思わないことはないですが、お洒落は彼らの生き甲斐のひとつのようにも見えます。父母だけでなく従妹や近所の人などもオメカシしてお祝いにやって来て、とっても賑やか。音楽大国だけあって、BGMはステレオではなく、生バンドです!

2019年6月 友人の息子の卒業式に参列した時の写真

卒業式が終わると、長い夏休みです。普段は2カ月もの間学校に通わない子供たちのために、様々なボランティアグループが「サマースクール」という学童保育を行います。筆者は青年海外協力隊員として派遣された2019年4月から2020年3月まで、学校現場で活動していました。そのため、夏休み期間中はたくさんのサマースクールに参加し、ワークショップを行いました。

信者が教会に子供たちを集めるサマースクール、地域の青年クラブのサマースクール、地域の図書館のサマースクールなど、どのサマースクールにもたくさんの子どもたちがやって来ていました。主催者の大人たちは、子供たちに有意義な時間を過ごしてもらおうと、勉強や手工芸、スポーツ大会など数々のイベントを企画していました。

地域の青年クラブのサマースクールでリサイクル工作のワークショップを行った。2019年

図書館の司書と知人だった筆者は、ある日突然「ちょっとうちのサマースクール手伝いに来て!」と依頼を受け、筆者の配属先に来ていたインターンの若者を引き連れて図書館に通うことになりました。 図書館に着いてみてぎょえっと驚きました。子どもが数人いるのかな、くらいの予想に反して、数十人の子どもがいたのです。

彼らの相手を筆者ひとりでするはとても無理でしたが、インターンのみんなが手伝ってくれてたおかげで、グループ編成をすることができ、子どもたちに様々なワークショップを提供することができました。

筆者にビシバシしごかれ時折うっとおしそうな顔を見せながらも最後までやり遂げてくれたインターンのみんなに感謝!

ところが今年は、サマースクールも行われません。新年度が始まる今年9月まで完全開校はなさそうです。となると、彼らは実に1年半もの間ほとんど通学していない状況になります。コロナ以前から、レジャーなどを楽しむ余裕のある家庭はほんの一部ですし、コロナ不況で生活は以前に増して厳しくなっているので、外出をほとんどしていない子供たちが多いと思います。

本当は先生や生徒のみんなに会いに行きたいところですが、学校が閉校しているためそれも叶いません。子供たちが置かれる状況や、ジャマイカの教育現場が向き合う課題について知るために、筆者が親しかった二人の先生たちに連絡を取り、電話でお話を伺いました。

1人目は、アレクサンドリアという山深い地域で小学校に併設される幼児園で教えているコニングハム先生です。彼女が生徒たちを「ベイビー」と呼ぶように、3、4歳の生徒はまだまだ赤ちゃんです。

筆者もそのおちびちゃんたちを相手にリサイクル工作を教えたことがありますが、本当に愛くるしい子供たちでした。コニングハム先生は筆者の質問に細かく答えて下さいました。

コニングハム先生が教えているInverness Primary Schoolでのセッション 2019年秋

― 昨年3月から対面授業が中止になり、オンライン授業に移行していますね。コニングハム先生もオンライン授業をなさっているんですか?

「はい、毎日オンラインで授業をしていますよ。でも、実際にオンライン授業を受けられるのは限られた生徒です。タブレットを持たない子ども、家にインターネットが無い子ども、住んでいるエリアにインターネットサービスが提供されない子ども、お金がなくてインターネット料金を払えない子どもが沢山います。」

― レゲエアーティストや大企業、政府などが沢山のタブレット端末を寄付したというようなニュースをよく耳にしますが、そういった寄贈はありませんか?

「残念ながら、私の周りではタブレットをもらったという話は聞きませんね。」

海外在住のジャマイカ人がジャマイカの子どもに何百個のタブレットを寄贈したというニュース
出典:Jamaica Information Service (FEBRUARY 16, 2021 WRITTEN BY: GARFIELD L. ANGUS)

― 先生が担当する生徒のうち、どれくらいの生徒がオンライン授業を受けていますか?

「3分の1くらいでしょうか。私の生徒は就学前の幼児なので、生徒のそばに家族やお手伝いさんが付いていないと授業が成り立ちません。

― 私も小さい子供が家でオンライン授業を受けているのを見たことがありますが、集中力が持ちませんね。誰かがみっちり横で付いていてサポートしない限り、オンライン授業で小さな子供を教えるのは不可能に感じました。

「特に、テストはダメですね。対面授業をしている時だって、ちょっと目を離したら子供たちは解答用紙をびりびりに破いたり塗り絵をしたりして遊んでいます(笑)。小さい子は手がかかりますからね。それに、オンライン授業では子供たちの学力が思うように伸びていないため、テストをしても子供たちが答えられない。そうすると親が代わりに回答してしまって意味が無いんです。だから、テストはやめました。」

― ジャマイカの親御さんは子供の宿題を代わりにしてしまう人が多いですね。子供の学ぶ機会を奪うつもりはないんだろうけれど、夏休みの課題の絵画なんかも代わりに描いてしまう。完璧にこだわるんでしょうか?

「出来ないことがダメだと思っているのでしょう。そうではなくて、子供が学ぶことが重要なのですが。」

学校のイベントでお姫様のように着飾るコニングハム先生の生徒 2019年秋 
Inverness Infant and Primary School in Alexandria, St. Ann

― ところで、オンライン授業を受けていない生徒がどうやって過ごしているのかご存じですか?

「分かりません。教育省が見回りユニットを出しているそうですが、私の地域には来ていません。」

― オンライン授業を受けられていない生徒の様子が全く分からないとなると、心配ですね。

「オンライン授業があるはずの時間帯に外で遊んでいる子どもも見ますしね。やることがなくて暇だと良くないことに巻き込まれるリスクも高まります。実際、学生の妊娠の報告が増えていると聞きます。」

― 深刻な問題です。他の先生もオンライン授業を受けられているのは担当している生徒の半分以下と話していましたが、この状況で子供たちは進級できるのですか?政府が1年リピートさせるような事を言っていた気がしますが・・・

「一体どうなるのか、さっぱり分かりません。子供たちは小学校に上がる時点で最低限の読み書きや計算のスキルを身に着けていることが期待されますが、今年はそれが叶わない子どもが多いでしょう。」

― そうなんですか?ジャマイカの義務教育は小学校からですよね?だけど小学校に上がる前に読み書きが出来ないといけないんですか?

「例えばHOTとかMATとか簡単な単語を理解していることが求められますね。」

― 知らなかったな。でも、このままいくと新年度が始まる9月まで全面的な開校が期待できませんよね。それどころか、万が一また新規感染者数が増加したら、また開校が先延ばしになるかもしれません。一体子供たちはどうなってしまうんでしょうか?

「政府は夏休みを一部削って学校を再開することも考えていると聞きました。」

― それは必要でしょうね。

「けれど、我々教師は休みなくオンライン授業などで働いているんですよ。休みがなくなるというのは、しんどいです。」

― なるほど、確かに。別の先生も「オンライン授業になって仕事が増えた」と仰っていました。先生たちにも多くの負担がかかっているのですね。早く子どもたちに会いたいですし、コニングハム先生にもお目にかかれる日が早く来て欲しいです。

「私もそう望みます。どうか、気を緩めることなく気を付けて過ごしてね。」

― ありがとうございます。先生もお気をつけて。

コニングハム先生が仲間の先生と共同で主催するサマースクールにて 2019年7月31日

続いて、筆者がよく通っていたEdgehill School of Special Educationというスペシャルスクール=知的障がいがある生徒が通う学校で教諭を務めるローレンス先生にお話を伺いました。

― ローレンス先生、お忙しいのにすいません。今日もオンライン授業だったんですか?

「構いませんよ。さっきオンライン授業が終わったところです。毎日朝から午後2時45分まで授業をしています。」

― なんか、後ろで子どもの声がしています。先生のお子さんですか?

「そうです。子供が二人いて、下が2歳です。」

― わ、それは大変ですね!育児しながら授業しているわけですね。働きに行かなくてはいけない親はどうしてるんでしょうか?誰かに見てもらうにしても、毎日ナニー(子守)を雇えないですよね。

「そうなんです。本当にみんな大変な苦労をしていますよ。」

― 先生の生徒たちは元気にしていますか?

「オンライン授業で顔を合わせている子供たちは元気にしていますよ。」

― やはりオンライン授業に参加できない子供もたくさんいるんですか?

「私が教えているSt. Ann’s Bay校では、72人在籍する学生のうち、オンラインクラスに参加しているのは30人程度です。参加者はひとりで参加する者もいれば、家族が付き添って授業を受ける生徒もいます。」

― オンラインクラスに参加できない生徒の安否確認はどうしているんですか?

「教員の近所に住む子供については教員が直接家を訪ねる場合もありますし、それが叶わない場合は『ガイダンスカウンセラー※』という教育指導員が直接訪ねるか、電話で安否確認を行います。」

※ガイダンスカウンセラー:ジャマイカの教育省が設置する教育支援機関で、各学校に在籍する。HIV / AIDSプログラム、学生支援プログラム、学校での健康と家庭生活教育を含むいくつかのプログラムを担当する指導協議会(Guidance Council)よりトレーニングを受けたカウンセラーが、生徒が抱える様々な問題の解決に取り組む。家庭環境が複雑な子供のケア、問題行動がある生徒の指導や支援、早期妊娠した学生のケアなど、生徒が抱える多岐にわたる状況に対応することが求められる。日本のソーシャルワーカー的存在。

― クラブ活動の方はどうなっているんでしょう?先日オンラインで年に一度の大会がありましたよね。参加されたんですか?

「もちろんです。今年は制作した作品を写真とビデオに撮って応募し、審査員もオンラインで審査します。」

― 対面授業が無いとは言え、お忙しいんですね。貴重なお時間ありがとうございました。

毎年夏に行われる農業ショーなども今年は全てオンラインイベントに縮小されていて寂しい。

まだまだ先が見えません。通学や外出が出来ずにストレスや不安を感じている子供たちのためにも、一日も早い学校の再開が望まれます。

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